【書評】みんなの寺のつくり方

書評
10 /19 2011
久しぶりに書評です。
仙台市泉区北中山にある「みんなの寺」の坊守、天野和公さんの2つ目の著作になる「みんなの寺のつくり方」です!
みんなの寺のつくり方
タイトルがターゲットを絞った感じになっているのですが、一つのベンチャーの事例として、とても参考になる本だと感じました。
どういった業種であれ起業を考えている人には、オススメできます。
特に、和公さんが東北大学卒業ということもあり、東北大生にはインスパイアされる部分もあると思いますよ!

立ち上げ時にはどのぐらいのお金がかかるのか?お寺がどういった形で収益を上げているのか?といった部分など、宗教法人の特殊性からあまり明るみに出て来なかった点に関しても細かく書かれています。
(正確には、お寺の全てが宗教法人というわけではないですので、詳しくはこの本を読んで下さいね)
お寺の種類などのFAQについては、コラムとして別に設けてあったりもして、丁寧な構成になっています。
個人的には、宗教法人化する際の実務と、「みんなの寺」という名称がゆえの危機の部分についてが、自分の仕事柄からも興味深い点でした。

和公さんは、みんなの寺絵日記というブログも書いていらっしゃるので、ぜひそちらも御覧下さい。
新規性と行動力が、ベンチャーの肝だと感じさせられます。
常にワクワクしながら、冒険=ベンチャーしていきたいものです!

北中山のお寺ですので、お近くまでいかれた際にはお立ち寄りされてみるのも一興だと思います♪
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BOPビジネスのバイブル 【書評】裸でも生きる

書評
01 /16 2011
裸でも生きる
世界最貧国、バングラデシュ。
そこには、この本のタイトル通り「裸でも生きる」人たちが存在している。
それを是非、多くの人に知ってもらいたい・・・
そんな著者の想いが込められた、超熱い本になっております。

恐らく、女性起業家ということで、起業に興味が有る方が手に取ることが多いと思うのですが、スポ根モノとしても相当面白い本です。
中学時代はグレていたのですが、柔道に目覚めてからの熱の入れっぷりが半端ないです。
メチャメチャ努力して掴んだ全中、そして高校では超強豪だけれども女子部がない学校への無謀な入学。
ボロ雑巾のように毎日投げられ、鼻は折れるわ耳は潰れるわ靭帯は切れるわで、何度も挫けそうになる日々。
それでも、全国を目指して『あきらめたらそこで何もかも終わってしまうから』といった、スラムダンクを地で行くような努力の末に、最後の最後で手にした全国への切符・・・
スポーツをやっていた(やっている)人に是非読んで欲しいです。

でも、パッと見は、全然そうは見えないですよね・・・(相武紗季に似ているのでは?)

高校の後の大学生活や、実際にバングラデシュでの生活についても、飾り気のない臨場感が溢れる記述になっています。
言っていることがなかなか伝わらなかったり、裏切られたり、大資本に虫けらのように扱われたり・・・
幾度と無く挫折寸前の憂き目に会いますが、バングラデシュに希望の光をもたらすという夢に向かって再び立ち上がる姿が、かっこ良すぎます。

『今時代に必要なのはこんな女性!』ではなくて、『これ読んで何もやらなかったら男(女)じゃない!』って感じです。
起業家の方の本は数多くありますが、その中でもトップクラスの作品ではないでしょうか。
メチャメチャインスパイアされますので、是非どうぞ!
(本読む時間なんかないわ!という人も、上の動画だけでも見ておくと超刺激受けますよ!)


人の真意を探る難しさ  【書評】超ヤバい経済学

書評
11 /18 2010
超ヤバい経済学

行動経済学本ブームの火付け役だった『ヤバい経済学』の続編です。
私は前作は読んでいませんが、今作は面白かったので前作も読んでみたくなりました。

個人的には、インドでの女性の地位が向上した理由の話しが面白かったです。

自然な出生だと、女の子の方が少し多く生まれますよね。
ですが、インドでは何故か男の子のほうが多い。
これは、胎児の時に女の子だと解ると、中絶するからです。
(本当は違法ですが、闇医者に高い金払ってでも超音波診断→中絶してもらうひとが多い)
インドでは、結婚するときに、女性が財産を持って男性の家庭に入っていきます。
これが、女性の家庭としては経済的にとても痛い!
そんなわけで、女の子が生まれてもあまり喜ばれません。
そもそも中絶してしまうこともありますし、産んだとしてもその後焼き殺されることもあるらしいです。

ところが、最近こういった反倫理的な行為が減少している地域があります。
様々な取り組みの中で、中絶しなかった人への奨励金、女性が事業を起こしやすいマイクロファイナンス、望まない妊娠を減らすためのインド人もびっくり(するほど小さい)サイズのコンドームなど(インド人は一般的に小さいらしい)は、あまり効果はなかったそうです。
実は、最も効果があったのは、テレビの普及だそうです。
テレビが普及した地域では、女性の地位が向上したと。
とは言え、テレビの普及でなぜ女性の地位が向上したかということは、具体的にはよく解らない部分もあるようです。
教育的な効果があったのか、クリケット(インドで最も人気があるスポーツ)に夢中で、女性に対してひどい扱いをする暇がないのか・・・

この話の興味深いところは、テレビの普及は単純に企業活動の結果であり、何も嬰児殺しや焼き殺しを減らそうとするための取り組みではないところです。
つまり、社会問題を解決する方法として、ピュアな市場原理の方が向いている場合もあるということです。
株式会社いろどりなんかにしても、狙いそのものは社会問題の解決ではないですしね。

インドの話だけではなく、風俗の話や環境問題やチャイルドシートの話やいろいろ面白いものが載っていますので、読んでみて損はないです!


追記

英題"Freakonomics"は、ブログツイッターもあるようですので、興味がある人はどうぞ。

【書評】俺は中小企業のおやじ

書評
11 /08 2010
6月のインド旅行で印象に残ったことの一つは、『スズキの車が多い』ということです。
それは感覚的なものではなくて実際に数字として表れており、インドの自動車シェアの5割以上!
インド自動車シェア
ネット海より
スズキ、スゴイ!!
そんなワケで、このスズキの社長の本は、前から読みたかった本でした。
スズキ社長本
以上のようなこともあり、インドの章がとても面白かったです。
2つほど、特に参考になりました。


1。空気を読む気がない

インドは、一般的にはカースト制が企業の空気にも影響しています。
仕事中に、異なる階級同士でのコミュニケーションは基本的にない様子。
一方、スズキは、幹部の部屋も食堂も、役職問わずにワンフロア。

この場合、『郷に入っては郷に従え』なんてことわざもありますから、インドの文化に従うのも一つの方策かと思います。

が、・・・

社長は、カースト制なんか全く無視。
インドの会社でも、日本のやり方を通しました。
幹部室の壁は取っ払い、昼食もみんなで一緒に食べる。
そんな事態に最初は馴染めなかったインド会社の上役も、次第に慣れていくから面白いものです。
この辺りの辣腕っぷりは、自身が社長になってから会社の規模を10倍にしているだけのことはあるなー、と感じました。
(ちなみに、中小企業なんて言っていますが、今年の利益はトヨタとあまり変わらないっぽい)


2。流れをしっかり読む

その場限りの空気は読みませんが、時代の大きな潮流をしっかり読む辺りは素晴らしいです。
そもそも、インド市場の開拓は、インドが市場経済化する90年代よりも前の1982年から行っています。
当時は、ちょっと高級目の車しか走っていなかったのですが、
『これだと庶民は手が出ないなー』
と感じて、アルトを投入。
売り出した直後から飛ぶように売れて、今では小さめの車(スズキのアルト、ワゴンR、タタ・モーターズのナノぐらいの大きさ)が市場の7割ぐらいを占めているそうです。


名だたる経営者は、時代の流れは読んでも、空気は読まないのかもしれませんね。
空気を読もうとすると、肝心な経営的な判断が鈍りそうな感じがします。
繰り返しになりますが、カーストを無視したところは、本当にスゲーと思いました。


追記

最近は、日本のトヨタ、日産、ホンダ、アメリカのGM、クライスラーなど、名だたるブランドが入ってきて一気にメジャーリーグになったインド自動車市場ですが、恐らくスズキの優位はしばらく続くのではないかという気がします。

1。次世代技術が生きないから

ところで、これは旅で感じたのですが、インドはやたら停電が多い!
つまり電気インフラが全然追いついておらず、インド政府自体、インフラの整備とかやる気無さそうな気がします。
(多分、インフラ全体そんな感じ。首都デリーでも、道路工事が中途半端なまま放置されているところがたくさんありましたし、ワールドゲームス直前に大きな箸が崩落したりとかありましたしね。)
つまり、ハイブリッドのような先端技術を生かしたくても生かせません。

2。小さい車のほうが快適だから

あと、インドは道路もすっごいごちゃごちゃしてます。
そのくせ、車線はないし、信号は少ないし、人は適当に横断してるし・・・

(1分30秒から1分50秒あたりがウケる)
あんまりデカイ車だと、するするーっと運転できなくてストレスが溜まりそうな気がします。
小さい車がウケるのは、価格もさることながら小さいことその者が評価されているような気がしますね。

【書評】ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業

書評
11 /02 2010
少し前に出た『これからの『正義』の話をしよう』と、最近出た『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』。
サンデル先生
この2つの大きな違いは、まえがきにも書いてあるのですが、『これからの~』はオバマ政権下、『ハーバード~講義録』の方はブッシュ政権下で書かれていることです。

例えば、

暴走する路面電車
 
 あなたは路面電車の運転士で、時速60マイル(約96キロ)で疾走している。前方を見ると、5人の作業員が工具を手に線路上に経っている。電車を止めようとするのだが、できない。ブレーキが利かないのだ。頭が真っ白になる。5人の作業員を跳ねれば、全員が死ぬと分かっているからだ。
 ふと、右側へとそれる待避線が目に入る。そこにも作業員がいる。だが、1人だけだ。路面電車を待避線に向ければ、1人の作業員は死ぬが、5人は助けられることに気づく。
 どうすべきだろうか?

この問いは、どちらの本にも書いてあります。

これに対する答えとして、特に『ハーバード~講義録』が興味深いです。
『講義録』によれば、これに対するハーバードの学生の大半は、脇に逸れようとする、つまり5人ではなく1人をひき殺す方を選択しています。
そして、ある女子学生と男子学生についての解答が載っており、

女子学生1 1人を殺せばすむところを、5人も殺すのは正しくないからです。

サンデル  1人を殺せばすむところを、5人も殺すのは正しくない(一同笑)。確かに、いい理由だ(一同笑)。他には?みんな、この理由に賛成かな?

男子学生1 9.11同時多発テロ事件と同じです。ワシントンに向かった飛行機の乗客は、地上で犠牲になる人より、数が少ない自分たち乗客が犠牲になることを選んだから、ヒーローなんです。 

9.11の直後に、ハーバードの学生がこのように考えていることが興味深いです。
どういう事かといいますと、ハーバードの学生ですら9.11ショックの大きさがゆえに、利用可能性ヒューリスティックスにより功利主義的な考え方になっているのではないか?と。
優秀な人ですら、その思考は社会背景の影響を色濃く受けるのかも知れません。

偉そうなこと言えませんが、その構成員が優秀であろうがなかろうが、社会は議論を通して作り上げられていくものなのでしょう。
そういった議論のための参考文献として、とても面白い本だと思います。

『講義録』には、今年の夏に東大で行われたサンデル先生の講義も収録されています。

『オバマ大統領は、原爆投下を謝罪すべきか?』
『イチローの年棒は高すぎる?』
『東大の入学資格をお金で買えるか?』 

など、聴衆が白熱しやすいテーマを持ってくる辺りは流石ですね。
東大の白熱っぷりも、ハーバードに負けてないですよ!


追記

サンデル先生の思想の立ち位置を知るための本として、『集中講義!アメリカ現代思想~リベラリズムの冒険~』もお勧めです。
アメリカ現代思想
第二次世界大戦後に、リベラリズムとマルキシズムが対立する中で、米国がベトナム戦争で敗北。
リベラリズムが迷走する中、リバタリアニズムとコミュニタリアニズムが登場して3すくみの状況に移っていく、といったことが解りやすいです。

3冊(4冊)とも『~イズム』のカタログとしても、便利です。
世の中、イズムで解ることばかりではないかも知れませんが、知っておいて損はないとも思います。